薬剤師が解説|亜鉛と銅

亜鉛と銅って、実は「セット」で考えたい栄養素です

サプリメント売り場でよく見かける「亜鉛」。免疫や肌に良いイメージを持っている方も多いと思います。

でも実は、亜鉛は 「銅」というミネラルとバランスで考えることがとても大切 です。薬剤師の立場から、少しだけ詳しくご説明します。

亜鉛は、体の「修復係」のような存在

亜鉛は、体の中でたくさんの働きをしています。たとえば

  1. 皮膚や粘膜の生まれ変わりを支える
  2. 免疫細胞が元気に働くのを助ける
  3. 味覚を正常に保つ
  4. 髪や爪の健康を保つ

など、「消耗した体を整える」役割を担っています。

風邪をひきやすい、肌荒れが治りにくい、味を感じにくい。そんなときに、亜鉛不足が関係していることもあります。

銅は亜鉛を支える縁の下の力持ち

一方で銅は、あまり注目されませんが、とても重要なミネラルです。銅は

  1. 鉄を体の中でうまく使うのを助ける
  2. 神経の働きを支える
  3. 活性酸素から体を守る酵素の材料になる

実は 銅が不足すると、鉄が足りていても貧血のような状態になる ことがあります。

亜鉛を摂りすぎると、銅が不足することがあります

ここが一番大切なポイントです。

亜鉛と銅は、腸での吸収が競合します。つまり、亜鉛だけを長期間たくさん摂ると、銅が吸収されにくくなる のです。

実際に

  1. 亜鉛サプリを長く飲んでいた
  2. 銅不足による貧血やしびれが出た

という報告は、医学論文でも確認されています。

そのため薬剤師としては、「亜鉛だけを単独で長期間飲み続ける」ことはおすすめしません。

こんな不調があるときは、バランスを見直して

亜鉛や銅のバランスが崩れると、次のようなサインが出ることがあります。

亜鉛不足のサイン
  • 味を感じにくい
  • 肌荒れが続く
  • 風邪をひきやすい
銅不足のサイン

(亜鉛の摂りすぎが原因のことも)

  • 貧血っぽい
  • 手足のしびれ
  • 疲れやすい

※これらは病気の診断ではなく、「栄養状態の目安」として考えます。

飲み合わせ・タイミングの注意点

薬剤師として、よくお伝えしているポイントです。

① 抗生物質を飲んでいるとき

亜鉛は、ニューキノロン系・テトラサイクリン系といった抗生物質の吸収を妨げることがあります。2〜4時間ほど時間をあける ようにしてください。

② 胃が弱い方は食後に

空腹時に飲むと、吐き気や胃のムカつきが出ることがあります。食後がおすすめ です。

摂りすぎないことも大切です

亜鉛は体に必要な栄養素ですが、「多ければ多いほど良い」わけではありません。

  • 亜鉛の摂りすぎ
  • 胃腸の不調、銅不足につながる可能性

日本の基準では、成人で 1日40mgまで が目安とされています。

サプリを使う場合は、毎日続ける前に 量とバランスを一度確認 してみてください。

薬剤師からのまとめ

  • 亜鉛は体を整える大切なミネラル
  • 「銅とセット」で考えることが重要
  • 摂りすぎ・長期単独摂取には注意
  • 食後・飲み合わせに気をつけると安心

サプリメントは「足りないものを補う」ためのもの。不安があるときは、ぜひ薬剤師に相談してください。

伊藤 誠人

伊藤 誠人ホッペ薬局新横浜駅店・管理薬剤師

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