「チアシード」の健康メリット4つ

チアシードとは?

チアシード(Chia Seed)は、シソ科サルビア属の植物「チア(Salvia hispanica)」の種子で、メキシコや南米原産のスーパーフードです。古代アステカ文明では、貴重な栄養源とされ、戦士たちのエネルギー源としても重宝されていました。チアシードの特徴は、水分を吸収すると膨らみ、ゼリー状の食感に変わることです。この特性により、満腹感を得やすく、ダイエットにも適した食品として人気があります。チアシードは、オメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)、食物繊維、タンパク質、ミネラルを豊富に含み、健康維持に役立つ栄養素が満載です。

1. 心血管の健康維持

チアシードに含まれるオメガ3脂肪酸(特にα-リノレン酸)は、心血管の健康を維持するために重要な栄養素です。オメガ3脂肪酸は抗炎症作用を持ち、血管内の炎症を抑制し、動脈硬化を予防する効果が期待されています。特にEPAやDHAは血圧の調整1)、LDLコレステロールの低下2)、血栓リスクの軽減3)に寄与するとされており、多くの研究でその有効性が報告されています。

チアシードに含まれるα-リノレン酸(ALA)は、体内でEPAやDHAに変換されるため、オメガ3の摂取源として非常に優れた食品と言えます。しかし、ALAからEPAやDHAへの変換率には個人差があり、研究によると0.1~21%という幅広い範囲があります。また、女性はエストロゲンの影響でEPAへの変換率が高い傾向があるとされています。4)
そのため、オメガ3脂肪酸を摂取する際には、チアシードだけでなく、EPA/DHAを含む食品と併せて摂取することが推奨されます。

さらに、チアシードに含まれる食物繊維は、LDLコレステロールを減少させ、動脈硬化リスクを軽減する可能性があります。5)水溶性食物繊維が胆汁酸を吸着し、体外へ排出することで、肝臓が新たな胆汁酸を作るために血中のコレステロールを利用するメカニズムによるものです。6)

2. 腸内環境の改善と血糖値のコントロール

チアシードは豊富な食物繊維を含んでおり、腸内環境を改善する効果があります。特に、水溶性食物繊維は腸内で胆汁酸を吸着し、その排出を促進する働きがあります。また、食後血糖値の上昇を抑える効果も期待されており、特に糖尿病やメタボリックシンドロームの予防に役立つとされています。食物繊維は腸内での消化を遅らせ、糖質の吸収を穏やかにするため、血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。これにより、糖尿病の予防や、血糖値のコントロールにも役立ちます。7)

3. 筋肉の修復と健康維持

チアシードは、9種類の必須アミノ酸を含んでおり、筋肉の修復や健康維持に役立つ植物性タンパク質の供給源です。長期のEPA+DHA補給は運動による筋力低下や可動域制限、および筋肉痛を緩和し、筋損傷からの回復を促進するというデータもあります8)。

チアシード摂取が運動後の回復速度を高めたり筋肉痛を顕著に軽減したりする確固たるエビデンスは不足していますが、特に運動後の筋肉の回復にはアミノ酸が重要なので、チアシードに含まれる植物性タンパク質は、間接的に筋肉の修復をサポートする可能性があります。運動後の筋肉の修復には炎症が関与することが多いため、オメガ3脂肪酸の摂取が有効とされているので、チアシードを日常的に摂取することが勧められます。

4. 抗炎症作用とDEL-1の関係

オメガ3脂肪酸(特にEPAやDHA由来のレゾルビン類)は、炎症を抑えるタンパク質「DEL-1」の発現を増加させることが示されています。9)DEL-1は慢性炎症を抑制し、さらに老化細胞の除去を促進して細胞の再生を助ける役割を果たします。このように、DEL-1の活性化は老化防止に寄与する可能性があります。10)

さらに、オメガ3脂肪酸はテロメアの長さにも良い影響を与えるとされています。テロメアは染色体の末端を保護し、細胞の老化と密接に関係しています。オメガ3脂肪酸がテロメアの短縮を抑制することで、細胞の寿命を延ばし、加齢に伴う健康問題の予防に寄与する可能性があることが示唆されています。11)そのため、オメガ3脂肪酸の摂取は、炎症を抑え、テロメアの維持にも貢献することで、加齢に伴う健康リスクを軽減する役割を果たすと考えられています。

チアシードの使用上のポイント

1. ゼリー状の食感を活かす:ヨーグルトやスムージーに加えると食感が楽しめます。
2. 非加熱調理がオメガ3脂肪酸を活かす:オメガ3脂肪酸は熱に弱く、加熱せずに摂取するのが望ましいです。
3. 加熱調理も可能:タンパク質や食物繊維の摂取が目的なら加熱調理も可能です。
4. 味に影響を及ぼさない:チアシードは特徴的な風味がないため、どんな食品にも加えやすいです。

まとめ

チアシードは、心血管の健康維持、腸内環境の改善、筋肉の修復、抗炎症作用といった多くの健康メリットを持つスーパーフードです。これらの特性を理解し、日々の食生活や健康管理に活かすことで、より適切な栄養サポートを提供することが可能になります。また、スーパーフードについての知識を深めることで、健康維持の選択肢を広げ、より良いアドバイスができるようになるでしょう。

引用

1) Zhang X. et al. Omega‐3 Polyunsaturated Fatty Acids Intake and Blood Pressure: A Dose‐Response Meta‐Analysis of Randomized Controlled Trials Journal of the American Heart Association. 2022 Jun 1;11(11):e025071.
2)Wang T. et al. Association Between Omega-3 Fatty Acid Intake and Dyslipidemia: A Continuous Dose-Response Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Journal of the American Heart Association. 2023 Jun 6;12(11):e029512.
3) Gao LG. et al. Influence of omega-3 polyunsaturated fatty acid-supplementation on platelet aggregation in humans: a meta-analysis of randomized controlled trials .Atherosclerosis. 2013 Feb;226(2):328-34.
4)Baker, E.J., et al., Metabolism and functional effects of plant-derived omega-3 fatty acids in humans Progress in Lipid Research Volume 64, October 2016, Pages 30-56
5) Rahman U.et al. Nutritional and therapeutic perspectives of Chia (Salvia hispanica L.): a review.J Food Sci Technol. 2015 Oct 1;53(4):1750–1758.
6) Alba T. et al. Food Res Int. Intake of soluble fibre from chia seed reduces bioaccessibility of lipids, cholesterol and glucose in the dynamic gastrointestinal model simgi®2020 Nov:137:109364.
7) V Vuksan, et al. Reduction in postprandial glucose excursion and prolongation of satiety: possible explanation of the long-term effects of whole grain Salba (Salvia Hispanica L.) Eur J Clin Nutr. 2010 Apr;64(4):436-8.
8)Yosuke T. et al. Eicosapentaenoic and docosahexaenoic acids-rich fish oil supplementation attenuates strength loss and limited joint range of motion after eccentric contractions: a randomized, double-blind, placebo-controlled, parallel-group trial.Eur J Appl Physiol. 2016 Apr 16;116:1179–1188.
9)Tomoki M. et al. Antagonistic effects of IL-17 and D-resolvins on endothelial Del-1 expression through a GSK-3β-C/EBPβ pathway.Nat Commun. 2015 Sep 16:6:8272.
10) George H. et al. DEL-1-regulated immune plasticity and inflammatory disorders Trends Mol Med. 2019 Mar 15;25(5):444–459.
11)Magdalena O. et al. Effect of Omega-3 Fatty Acids on Telomeres—Are They the Elixir of Youth? Nutrients. 2022 Sep 9;14(18):3723.

井手口 直子

井手口 直子帝京平成大学薬学部教授・薬剤師

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