天然ビタミンCの宝庫・カムカム
カムカム(Myrciaria dubia)は、南米アマゾン原産の果実で、「天然ビタミンCの王様」と呼ばれるほどビタミンCが豊富です(約2,000〜3,000mg/100g果実)1)。これはレモンの約20〜30倍に相当します。さらに、ポリフェノールやアントシアニンといった植物由来の抗酸化成分も多く含まれています。こうした栄養素の組み合わせが、体を守る働きや代謝のサポートに寄与すると考えられ、近年はヒトを対象とした研究からも、その効果が少しずつ明らかになってきました。
抗酸化作用 ― ビタミンC単独との違い
ビタミンCは、免疫や抗酸化に欠かせない栄養素です。興味深いのは、同じ量のビタミンCでも摂取源によって効果が異なる点です。
喫煙習慣のある男性20名を対象に、同量のビタミンCを錠剤またはカムカム果汁で7日間摂取してもらったところ、カムカム群だけが酸化ストレスマーカー(尿中8-OHdG)や炎症指標(高感度CRP)が有意に低下しました2)。この差は、カムカムに含まれるポリフェノールやアントシアニンによる相乗効果と考えられます。
肝機能を守る
2024年の無作為化二重盲検試験では、脂肪肝リスクのある男女30名が12週間カムカム由来のサプリメント(ビタミンC換算1,050mg/日)を摂取しました。その結果、MRI で評価した肝脂肪量が平均7%以上減少し、AST・ALT 値も有意に改善しました3)。研究者は、抗酸化作用や炎症抑制効果に加え、腸内環境の改善が肝機能保護に寄与している可能性を示唆しています。
腸内環境の変化
カムカムを摂取した人では、腸内の善玉菌(Lactobacillus など)が増え、肝臓の不調と関わる菌は減りました。短鎖脂肪酸は、腸内細菌が食物繊維を分解するときに作られ、腸や全身の健康に重要ですが、今回の試験では有意な変化は見られませんでした。それでも、菌の組成改善からプレバイオティクス的な作用が示唆されます3)。
血糖値の安定化
2017年にブラジルで行われた臨床試験では、健康な成人23名が、食パンと一緒にカムカムを含むブラジル産フルーツジュース(300mL)または水を摂取し、その後2時間の血糖値変化が比較されました。
その結果、カムカムジュースを飲んだ場合は、水の場合と比べて食後の血糖値上昇が有意に抑えられ、血糖変動を示す「曲線下面積(AUC)」も低下しました。これは、糖の吸収をゆるやかにし、インスリンの働きを助ける可能性を示しています。ポリフェノールやビタミンCによる抗酸化作用も、この効果に関与していると考えられます5)。この研究で使われた「フルーツジュース」は、ブラジル原産フルーツの『クラリファイド(澄んだ)ジュース』で、果肉や食物繊維を除いた上澄み部分を使用しています。果糖も含むジュースであることから、糖分摂取の過多には注意が必要であり、摂取量や個人の健康状態を踏まえた適切な利用が求められます。
目安量
カムカムパウダーや果汁:一般的には1日あたり3〜5g(パウダー)または10〜30mL(果汁)程度が用いられます。ただし、ビタミンC含有量は商品によって大きく異なるため、パッケージ記載の「1回量」「1日量」を必ず確認してください。
サプリメント:製品ごとの含有量に応じて調整。表示の推奨量を守ることが安全です。
注意:自己判断で大量摂取すると、腎結石や尿酸値上昇などのリスクが高まる可能性があります。
上限について
日本の「食事摂取基準(2025年版)」では、ビタミンCの耐容上限量(UL)は設定されていません。健常な人が多く摂取しても、吸収率が低下し余分は尿中に排泄されるため安全性は高いとされますが、サプリメントから1日1g(=1,000mg)以上の摂取は推奨されません。これは、下痢や腹痛などの消化器症状が報告されているためです6)。
注意点(ビタミンC過剰摂取)
腎機能障害を有する方が数 g/日のビタミンCを摂取した場合、腎シュウ酸結石のリスクが高まることが報告されています。また、過剰摂取による影響としては、吐き気、下痢、腹痛などの胃腸症状がもっとも一般的です。1日に3〜4gのアスコルビン酸摂取で下痢を認めた例もあります6)。
まとめ
本記事で紹介したヒト試験はいずれも小規模試験であり、今後はより大規模な研究での再現性確認が望まれます。一方で、カムカムはビタミンCだけでなくポリフェノールの力も合わせ、抗酸化、肝機能保護、腸内環境改善、血糖コントロールといった多方面多面的な健康作用を発揮します。日常的な摂取は健康維持や生活習慣病予防の強い味方になり得ます。
参考文献
1.Justi KC, Visentainer JV, Evelázio de Souza N, Matsushita M. Nutritional composition and vitamin C stability in stored camu-camu (Myrciaria dubia) pulp. Arch Latinoam Nutr. 2000;50(4):405-8.
2.Inoue T, Komoda H, Uchida T, Node K. Tropical fruit camu-camu (Myrciaria dubia) has anti-oxidative and anti-inflammatory properties. J Cardiol. 2008 Oct;52(2):127-32.
3.Agrinier AL, et al. Camu-camu decreases hepatic steatosis and liver injury markers in overweight, hypertriglyceridemic individuals: A randomized crossover trial. Cell Reports Medicine. 2024;5(8):101682.
4.García-Chacón JM, Marín-Loaiza JC, Osorio C. An Amazonian Fruit with Biofunctional Properties – A Review. ACS Omega. 2023;8(6):5169-5183.
5.Balisteiro DM, Alezandro MR, Genovese MI. Effect of clarified Brazilian native fruit juices on postprandial glycemia in healthy subjects. Food Research International. 2017;100(Pt 1):196-203.
6.日本人の食事摂取基準(2025年版) 厚生労働省.