薬剤師が解説
鉄
「貧血」だけの話ではない、全身のエネルギーと集中力を支えるミネラル
「鉄=貧血の人が飲むもの」そう思われがちですが、薬剤師の立場から見ると、鉄は全身の働きに関わる、非常に重要なミネラルです。
鉄は「酸素を運ぶ」ために使われています
鉄は、血液中のヘモグロビンの材料となり、全身に酸素を運ぶ役割を担っています。
そのため鉄が不足すると、
- 体に十分な酸素が行き渡りにくくなる
- エネルギーを作りにくくなる
といった状態につながります。
こんなサインがあると、鉄不足の可能性も
病気の診断ではありませんが、薬剤師として次のような相談を受けることがあります。
- 疲れやすい
- 立ちくらみがある
- 顔色が悪いと言われる
- 集中力が続かない
- 寝ても疲れが取れにくい
これらは、鉄不足で起こりやすい変化として知られているものです。
女性・成長期・高齢者は不足しやすい
鉄は体内で作ることができず、食事や食品から補う必要があります。
- 月経のある女性
- 妊娠・授乳期
- 成長期
- 食事量が少ない高齢者
では、知らないうちに不足しやすいことがあります。
認知機能・睡眠との関係について
鉄は、脳内で使われる神経伝達物質の働きにも関わっています。
- 集中力
- 注意力
- 睡眠の質
注意
※これは医薬品のような効果を保証するものではなく、生理学的な役割として知られている範囲の話です。
摂りすぎた場合のリスク
鉄は不足も問題ですが、摂りすぎも問題になるミネラルです。
- 胃の不快感
- 便秘
- 吐き気
- 体内に鉄が蓄積するリスク
特に男性や閉経後の女性では、医師の指示なく大量に摂り続けることはおすすめできません。
飲み合わせで注意したいもの
お薬との相互作用
効果が弱くなる可能性があるもの
- 抗生物質(ニューキノロン系、テトラサイクリン系など)
- 甲状腺のお薬(レボチロキシン)
吸収を妨げやすいもの
- カルシウム
- マグネシウム
- 亜鉛
- お茶・コーヒー(タンニン)
吸収を助けるもの(過剰摂取に注意)
- ビタミンC
ポイント服用のタイミングを2〜4時間あけることで、多くの場合問題を回避できます。単独で時間をずらして摂るのが基本です。
飲むタイミングの考え方
- 胃が弱い方:食後
- 問題ない方:食間
無理なく続けられるタイミングを優先してください。
検査なしでの長期摂取は注意
血液検査(フェリチンなど)や医師の判断があると、より安全に使えます。
必要性を確認しながら補うことが大切です。
薬剤師からのまとめ
- 鉄は全身の酸素運搬とエネルギーに関わる
- 疲れやすさや集中力の低下と関係することがある
- 不足しやすい人がいる一方、摂りすぎにも注意
- 飲み合わせや時間帯を意識する
- 長期使用は医療者に相談を
鉄は「とりあえず飲めばいい」サプリではありません。
正しく知って、必要なときに、必要な量を。これが薬剤師として一番伝えたいポイントです。