薬剤師が解説
亜鉛と銅
実は「セット」で考えたい、大切なミネラルバランス
サプリメント売り場でよく見かける「亜鉛」。免疫や肌に良いイメージを持っている方も多いと思います。
でも実は、亜鉛は「銅」というミネラルとバランスで考えることがとても大切です。薬剤師の立場から、少しだけ詳しくご説明します。
亜鉛は、体の「修復係」のような存在
亜鉛は、体の中でたくさんの働きをしています。
- 皮膚や粘膜の生まれ変わりを支える
- 免疫細胞が元気に働くのを助ける
- 味覚を正常に保つ
- 髪や爪の健康を保つ
このように亜鉛は、「消耗した体を整える」役割を担っています。
風邪をひきやすい、肌荒れが治りにくい、味を感じにくいといったときに、亜鉛不足が関係していることもあります。
銅は亜鉛を支える縁の下の力持ち
一方で銅は、あまり注目されませんが、とても重要なミネラルです。
- 鉄を体の中でうまく使うのを助ける
- 神経の働きを支える
- 活性酸素から体を守る酵素の材料になる
実は、銅が不足すると、鉄が足りていても貧血のような状態になることがあります。
亜鉛を摂りすぎると、銅が不足することがあります
ここが一番大切なポイントです。
亜鉛と銅は、腸での吸収が競合します。そのため、亜鉛だけを長期間たくさん摂ると、銅が吸収されにくくなることがあります。
実際に、
- 亜鉛サプリを長く飲んでいた
- 銅不足による貧血やしびれが出た
といった報告は、医学論文でも確認されています。
薬剤師としては、「亜鉛だけを単独で長期間飲み続ける」ことはおすすめしていません。
こんな不調があるときは、バランスを見直して
亜鉛や銅のバランスが崩れると、次のようなサインが出ることがあります。
亜鉛不足のサイン
- 味を感じにくい
- 肌荒れが続く
- 風邪をひきやすい
銅不足のサイン(亜鉛の摂りすぎが原因のことも)
- 貧血っぽい
- 手足のしびれ
- 疲れやすい
注意
※これらは病気の診断ではなく、栄養状態を考える目安としての情報です。
飲み合わせ・タイミングの注意点
薬剤師として、よくお伝えしているポイントです。
① 抗生物質や甲状腺のお薬を飲んでいるとき
亜鉛は、ニューキノロン系・テトラサイクリン系抗生物質や、レボチロキシンなどの甲状腺のお薬の吸収を妨げることがあります。
2〜4時間ほど時間をあけるようにしてください。
② 胃薬を飲んでいるとき
ポラプレジングなど、亜鉛を含む胃薬との併用は、過剰症のリスクにつながるため注意が必要です。
③ 胃が弱い方は食後に
空腹時に飲むと、吐き気や胃のムカつきが出ることがあります。胃が弱い方は食後がおすすめです。
摂りすぎないことも大切です
亜鉛は体に必要な栄養素ですが、「多ければ多いほど良い」わけではありません。
- 亜鉛の摂りすぎ
- 胃腸の不調や銅不足につながる可能性
日本の基準では、成人で1日40mgまでが目安とされています。
サプリを使う場合は、毎日続ける前に量とバランスを一度確認してみてください。
薬剤師からのまとめ
- 亜鉛は体を整える大切なミネラル
- 銅とセットで考えることが重要
- 摂りすぎや長期の単独摂取には注意
- 食後や飲み合わせを意識すると安心
サプリメントは「足りないものを補う」ためのものです。
不安があるときは、ぜひ薬剤師に相談してください。